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People working in Kurashiki 倉敷で働く人たち

働きがいのある「稼げる農業」を

倉敷市はマスカットや白桃など贈答用の高級フルーツの生産地としても有名です。
そんな地元の特産品を中心としたさまざまなフルーツの果汁を使ったゼリーや
お菓子のブランド「GOHOBI」を展開している株式会社果実工房の平野幸司社長は、
農家と協力して技術やノウハウを共有し、関わる人みんなが利益を得られる仕組みづくりを行っています。
季節ごとに必ず生産地を訪れるという平野社長に、倉敷市の農業についてお話を伺いました。

平野 幸司 株式会社 果実工房 代表取締役

生まれ育った
土地の良さを再発見

私は倉敷市の玉島出身で、今でこそ玉島はレトロな商店街が残る町として知られていますが、自分が学生だった当時は遊ぶ場所もなく、早く出たいとばかり思っていました。果実工房を立ち上げるまで17年間ずっと転勤族のサラリーマンだったので、外に出て初めて「倉敷っていいところだな」と実感しました。倉敷で一番好きなところは自然の豊かさ。特に海が好きなので、時間があったらシーサイドサイクリングに出かけます。倉敷市には穏やかな瀬戸内海があり、水質の良い高梁川があり、山もあり、豊かな自然に囲まれ癒されながら働く環境も整っている、中規模の都市ならではの良さがつまっているところだと思います。

使われなかった
高級果実を商品化

2006年にUターンで戻ってきた時の転職先が贈答用果物を販売する会社で、出荷できずに捨てられている果物がたくさんあることを知りました。それを商品化して活用できれば、農業者の収入増にもつながるのではと考えました。地元で作られている贈答用の高級マスカットも、粒のサイズがそろわないものや小さく育ってしまったものはどんなに味がよくても商品にならず、すべて無駄になっていたのですが、そういった果実を引き取って果汁に加工し、ゼリーやキャンディーなどに商品化しました。当時は県内に加工工場がほとんどなかったので、スキームを一から作り上げ、過程やノウハウをすべて農家さんたちと共有して協力し合って進めていきました。だから今でも農家さんたちとはとても良い関係が築けています。

倉敷の農業は
「稼げる」農業

国産フルーツの果汁を使ったブランド「GOHOBI」では、地元の果物のほかにも日本全国の産地のものを取り扱っています。各地を実際に訪ねてみると、同じ果物でも場所によって生産方法が全く違うことがわかります。土地がたくさんあるところは作物を量産しようとし、少ない土地では一反あたりの平均単価を高めるものを作る傾向にあります。また、国内でも南の温かい地方から出荷が始まるので、最初に出るものは値段が高く、後発になるほど市場の相場は安くなります。倉敷市の農業は、「ブドウの女王」とも呼ばれるマスカット・オブ・アレキサンドリアに代表されるように、量産せず大切に育て上げる、美術品に近い域と言えるでしょう。

だから芸術肌・職人肌の人、何かひとつを極めたい人に向いているのではないでしょうか。今の倉敷市の若い農業家さんたちは研究熱心で、全国の農家に勉強会に行ったり、年間約3000万円を稼いでいたりする20代~30代の農業家もいます。本当に品質の良いものを作ればそれだけ儲かる可能性を秘めているのが、倉敷市の農業です。

新規就農者に
心強い味方がたくさん

高級果樹産地である倉敷市船穂町では、若者の新規就農について積極的に支援する風土があります。でもゼロの状態から農業に新規参入するのはなかなかハードルが高いイメージもありますよね。
私の知り合いで、大阪から移り住んでワイン用のブドウを作っている松井君という青年がいますが、初めは農家に居候してブドウ作りを覚えていったそうです。また、船穂町の農業の後継者クラブは、先輩として新規就農者をサポートしてよく面倒をみてくれています。

新規参入者は慣れないうちは失敗することもあり、一つのハウスの果物がダメになると本来200万円~250万円の損失になるところを、果実工房が加工品として100万円ぐらいで買い受けることもあります。「万が一、失敗してもお金に変えられる場所がある」という受け皿のような存在になればと考えています。また、季節のよい時期には毎週末のように近隣各地でマルシェが開かれていて、店舗を持たなくても商品を売る場所がたくさんあるので、農業に限らず自分たちのやりたいことを表現するには、倉敷市はとてもよい条件がそろっていると思います。

継続的な利益を得るための「農業の産業化」に向けて

果実工房は「農業の産業化」を目指して2015年に奈義工場を操業しましたが、これからは大きな加工工場だけでなく、小規模なプラントを各地に置いた加工チームも作りたいと考えています。例えば果物を潰すだけなら小さなスペースでも可能なので、うちの会社がノウハウを提供して、加工方法のルールを守ってくれれば買い取りますという仕組みにすれば、今よりもっと気軽に取引できる場所ができて、過疎地域の農業を活性化することにもつながるはずです。また、これからの農業を発展させていくことを考えれば、プレゼン力やマーケティング力のある人にも農業にぜひチャレンジしてほしいですね。

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